試行錯誤は「トライ&エラー」と訳されます。
これにはいろんな見方があると思いますが、最近、試行錯誤は「ABテスト」の繰り返しだと思うことが多いです。
普通に試行錯誤というと、トライ&エラーなので「試す」「失敗する」「また別のものを試す」ということで、どこかを見据えて突き進んでいく一本道のような感じがします。
それはそれでそうなのかな、とも思います。このイメージは、Dr.Stoneの主人公である千空のセリフで「調べまくる!試しまくる!」という名言がありますが、そういうイメージです。
ただ、最近、これとまた少し違うイメージとして、「ABテストの繰り返し」というのがあると思うようになりました。そして、そのイメージって、昔の職場で働いていたときに思ったことと似てるな、と。
昔の職場で働いていて思ったことがありますが、法務部の人というのは実はそんなに法律に詳しくないです(詳しい会社もあるが、詳しくない会社も、少なくとも珍しくない割合で存在する)。
しかし長いことその会社と付き合いのある顧問弁護士というのは、どの会社にいても結構いい人が残っているケースが多いです(以下の過去記事参照)。これはどうしてかというと、法律的なレベルを絶対的なレベルで判断する事はできなくても、「A」と「B」という2択にしたときに「B」の方が良いという判断は、素人でも比較的正確にできるからです(ABに入るものがドキュメントであれ外部の弁護士であれ)。その結果、長い時間をかけると良い先生が残っていくということです。
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ということは、泥臭いやり方ですが、一般的にいって、素人であってもかなり専門的なレベルに近づいていくことは、ABテストをくり返し続けていけば可能ということになります。
どういうことかというと、例えば「A」と「B」を比較したときに、「B」の方が良いというのは、仮にプロの目から見てそうであったとして、「A」と「B」との比較であれば、素人にも「B」の方を選択できます。
だとすれば、これを繰り返していけば、素人でもクオリティーをアップしていくことができるわけです。
これは自分がブログの方で、素人なりにもデザインを良くしようとやっていくうちにその感覚から出てきました。あれ?結局これって、やってることは、昔見たことのある景色、つまり法務部の人が外部弁護士やらドキュメントやらの比較を(結果的に)やっていたのと結構似てるな、と。
「A」と「B」を比較して「B」の方が良いという判断は、素人でもできる(専門家の判断もそれと同じことが多い)。続いて、「B」と「C」を比べて、「C」の方が良いという判断はできる。そしたら「C」に変更する。逆に、現状「F」であったときに、「F」と「E」を比べて、これはどうも元の「F」の方が良かったっぽいなと思うと、元に戻す。
これを繰り返していくと、徐々に「G」「J」「L」と、にじり上げるようにレベルを上げていくことができるわけです。
これは専門家の目から見れば、例えば「N」が初めから正解であったとして、そこにたどり着くことは専門家であれば一発でできるけれども、素人でも、ABテストの繰り返しで「N」までたどり着くことができる、ということです。
しかし考えてみれば、専門家も実はこれと同じことをやっているような気もします。
専門家の場合は、さらに専門家というのがいないので、専門家自身も、暗中模索で探すしかありません。そういったときに、「P」と「Q」を比べると「Q」の方が良いので変更する、あるいは「Y」と「X」を比べるとどうも「Y」の方が良いということで元に戻す、こういった高いレベルでの「ABテスト」を行って、暗中模索の中、じりじりとレベルを上げていっているということが、実はプロにも言えることではないかと思います。
そして最終的には「Z」にたどり着く、あるいはそこを目指していくということです。
ベンチャー出身の人などで多動を推奨する人が多いのは、彼らは正解のないところを歩いているので、自然とこういったやり方をやっているからではないかと思うようになりました。ベンチャーの経営者に朝令暮改が多いのも、ある意味これで説明がつきます。
単にトライ&エラーのイメージだと、たまたま成功するまでやり続ける、という感じで、運も絡んだイメージになりますが、ABテストだと考えると、じりじりと物事を良くしていっているのだ、そして、どうせ泥臭いやり方なんだったらひたすら早くそれをやりまくる方がよい、という考え方になるのは自然なことのように思います。
あるいはトライ&エラーも、「この方法だとうまくいかない」というネガティブ結果、いわゆる失敗の蓄積が成功に向かう方法、というイメージだと、これも一種のABテストのくり返しといえるのかもしれないなと。
そうすると、やっぱり試行錯誤はABテストのくり返し、ですね。