本日、Xで今っぽい話題のポストがアミューズ法務部のアカウントからされていましたので、サクッと見てみたいと思います。
アミューズはタレント事務所なので、生成AIなんかもこういう切り口から見えてるんだなあという感じで、おもしろいです。
本日のピックアップポスト
本日は、最近もニュースになっており、日ごろの業務や雑談でも話題になる生成AIについて、エンタメ法務の観点から特に重要な論点をピックアップします。
— 株式会社アミューズ 法務部 (@AmuseLegal) September 17, 2025
具体的には、
「生成AIと著作権」
「生成AIとパブリシティ権」
の2つです。…
このポストでは、生成AIに関して、エンタメ法務の観点から特に重要な「著作権」と「パブリシティ権」の2つの論点が、最近の事例を交えて解説されています。
やや長いポストなので、以下で読み解いてみます。
ポストを読み解く
著作権とパブリシティ権の内容と違い
まず、それぞれの権利の内容と違いの確認からです。
著作権は、著作物(例:新聞記事)を保護し、無断利用を禁じる権利です。
一方、パブリシティ権は、有名人の氏名、肖像、声などが持つ魅力(経済的価値)を保護し、無断での商業利用を禁じる権利です。
最近の事例
次に、生成AIと著作権が問題となる最近の事例として、2025年8月の新聞社3社による生成AI業者提訴の例が挙げられています(以下は2025/8/26の記事)。
これは、生成AIによる新聞記事(著作物)の無断学習や類似内容の生成が、著作権侵害にあたるかが論点となります。
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日経・朝日、米AI検索パープレキシティを提訴 著作権侵害で - 日本経済新聞
日本経済新聞社と朝日新聞社は26日、生成AI(人工知能)を用いた検索サービスを提供する米新興パープレキシティを東京地裁に ...
www.nikkei.com
一方、生成AIとパブリシティ権が問題となる最近の事例として、生成AIに声優の音声を無断学習・再生させた疑いのある事例が挙げられています(以下は2025/11/6の記事)。
これは、有名人の声の魅力(経済的価値)を、無断で商業利用したかが論点となります。
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無断生成のAIボイスを聞いた人気声優「覚悟していたが、不気味だった」…声には著作権の保護及ばず : 読売新聞
【読売新聞】アニメ「進撃の巨人」のエレン役などを務める人気声優の梶裕貴さん(39)=写真、事務所提供=は数年前、AI(人 ...
www.yomiuri.co.jp
他に考えられる事例(シュミレーション)
さらに以上のほか、生成AIにプロンプト(指示)を入力して、
- 有名人の顔を描かせた
- 有名人そっくりのイラストを描かせた
- 有名人そっくりの声を生成した
という想定事例を挙げて、論点が検討されています。
ⅰ有名人の顔を描かせた場合では、AIがネット上の写真(著作物)を学習する(吸い込む)際、著作権侵害が問題となります。具体的には、著作権法第30条の4の適用の可否が問題となります。
▽著作権法第30条の4第2号(※【 】は管理人注)
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる【=いわゆる非享受利用】。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
ⅱAIが生成した有名人にそっくりなイラストの利用は、パブリシティ権侵害が問題となります。商業利用にあたるかで成否が決まります。
例えば、侵害にならない例としては、私用PCのデスクトップ使用(①)が挙げられています(商業利用ではないため)。他方、侵害になる例としては、Tシャツにプリントして販売(②)、自社の宣伝に使う(③)といった例が挙げられています(いずれも商業利用にあたるため)。
ⅲAIが生成した有名人にそっくりな声の利用も、同じくパブリシティ権侵害が問題となります。これも商業利用にあたるかで成否が決まります。
結び
このように、生成AIをめぐる法律問題、特に著作権(機械学習及び類似内容の生成)とパブリシティ権(生成物の商業利用)は、エンタメ法務において非常に重要であり、引き続き注目が必要であるとまとめられています。
以上、サクッと法律トピックでした。
[注記]
本記事は管理人の私見であり、管理人の所属するいかなる団体の意見でもありません。また、正確な内容になるよう努めておりますが、誤った情報や最新でない情報になることがあります。具体的な問題については、適宜お近くの弁護士等にご相談等をご検討ください。本記事の内容によって生じたいかなる損害等についても一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。